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蛙なく不審尋問蛙なく 名もなき小さき力なき それでも声をあげる 草や路上 汗にまぎれた生活の詩


by tatazumi
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冬に向かって行け    井之川巨


                                      詩集未掲載
●冬に向かって行け        井之川巨
冬は
ドブ川を凍らせ
水たまりを凍らせやってくる
冬は
おれたちの鼻水を凍らせ
冬は
北風のむちで
おれたちの頬っぺたをたたきながらやってくる
冬は
ものをいおうとするおれたちの唇を
ぎしぎし凍らせようとやってくる
しかしおれたちは
凍った唇を歯でかみ破ってでも
語りかけるだろう
おお
冬こそおれたちの宿敵
戦前、全協をつぶし
戦後、産別会議をパージし
いままた
右側から吹きすさぶ労線統一の雪あらし
冬は
いつだって鼻先で笑いながら
おれたちの仲間から仕事を奪っていった
湯気のたつ食べものや
温かい寝床を奪っていった
ときにはその生命さえ奪い去った
しかし
この地で死んだ仲間たちは
遠くへ行ってしまったのではない
夕映えの光のなかに
泣きわめく子供のなかに
もえさかる焚火のなかに
投げられた石つぶてのなかに
いまも死んだ仲間たちは生きている
生きて共にたたかっている
おお冬よ
試練の季節よ
おまえはおれたちにとって
またとない好敵手だ
きょうも
冬の手先たちはねらっている
望遠レンズを銃口のようのに構えなが
車のなかから
建物のなかから
春の使者たちをねらい撃ちしている
だが冬はほんとうに
おれたち労働者の熱くもえる心を
冷凍魚のように凍らせることができるか
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by tatazumi | 2011-01-22 19:46 | 井之川巨 | Comments(0)