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蛙なく不審尋問蛙なく 名もなき小さき力なき それでも声をあげる 草や路上 汗にまぎれた生活の詩


by tatazumi
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『句集 風懐に歩三昧 幸月』より
      毎日巡礼ヒロユキが気に入った句①
 幸月さんは刑務所から出て新居浜の市営住宅に暮らしていました。私は四国遍路の途中、幸月さんの部屋に何度か一泊させてもらいました。その時に彼の話をいろいろと聞かせてもらいました。
 幸月さんの句集から野宿遍路の生活がわかる句を選んで見ました。
氏素状口を開きし寒蜆  幸月
 最初に発掘したのがこの句です、以前句集を読んだときは眼にはいらず頭に残りませんでした。今回一句一句何度も読み返し発掘しました、幸月さんの境遇が重なり傑作ではないかとも思います。
 句集が出された時点では幸月さんの過去は明らかになっていません。蜆汁の貝殻を箸でつまみながら「氏素性・・・」という言葉が出てきたのでしょうか、なかなか思いつかないではないでしょうか。
過去があり来世に繋ぐ遍路哉 幸月
 句集の最後の句、来世に繋ぐはずの遍路途中で逮捕→服役となり、出所後は足腰そして心臓も弱ってきて歩き遍路には出られませんでした。でも裁判で被害者から「刑を軽くしてほしい」と言われ、過去の罪を償い、来世へと旅立ったのですから結局は良かったのかもしれません。
 野宿遍路と親しくなっても氏素性など聴かれない、自分も話したくないから人にも聞かない、仏教や信仰の話もほとんどしない、ただの世間話しかしない。
 私は誇れる過去もないし、面白く話すこともできない、無駄話はしない小さな菩薩行(和顔施、これ一っとっても日常続けていくのは難しい)が行えるように勤めながら来世をめざすか。        毎日巡礼ヒロユキ
       
※氏素状 本来は氏素性の表記が正しいようです、パソコンでは「氏素状」出てこないので分かった私です。


# by tatazumi | 2023-05-06 07:11 | 「句集 風懐に歩三昧 幸月」から | Comments(0)
『句集 風懐に歩三昧 幸月』より
      毎日巡礼ヒロユキが気に入った句②

風懐に千日遍路 幸月

 私が四国遍路している時、地元の人から「何回廻っているの」とよく聞かれる。私は廻った回数は気にしていないし錦札を持つつもりもない、死ぬ時は白札の方が好いと思っている。説明するのもメンドクサイので5、6回位かな?と答えている。
 そんな質問される前に「千日遍路」ですと言えば感心され「何回廻っているの」の質問を防ぐことができるかもしれない、回数など気にしていません千日の間ずっと生活すべてが遍路ですよ、通いの遍路ではありませんの宣言である。

 私は幸月さんは「比叡山千日回峰行」を批判していたので、そこから千日遍路の言葉が出てきた様に思う。弟子に身の回りの世話や食事の支度させての修行なんて、一人で全て行う遍路のほうが苦労している大変だ、と幸月さんは言っていた。
 私も所帯道具一式を台車に載せて野宿生活のへんろは大変だと知っている、台車を押していない荷物の少ない遍路も別の意味で苦労していると思う。疲れた体で寝場所探し自炊し、私は2018年の夏は夕食後の手洗いの洗濯を毎日のように夜遅くしたことを大変だと感じた。
 もっとも千日遍路と言っても3年間だけですから、別に珍しい事でもない、それ以上の遍路や漂泊者はいくらでもいる。

# by tatazumi | 2023-05-06 07:06 | 「句集 風懐に歩三昧 幸月」から | Comments(0)
『句集 風懐に歩三昧 幸月』より
      毎日巡礼ヒロユキが気に入った句③

田の中の幸月に鳴く蛙哉 幸月
蛙鳴く不審尋問蛙鳴く 幸月


 「田の中」と「幸月」の二つの言葉の取り合わせだけで気に入った。幸月さんから「水路に座り込んで水をせき止め水浴びする」と聞いていたので「田の中の幸月」も直ぐに浮かんできました。
 二つの蛙の句をまとめて読み解きます。幸月、さちあるつき満月です、満月に向かって蛙鳴いています。その声が、あまりにもうるさいので警察に通報があり、蛙さん不審尋問されています。蛙さんやるせない気持ちです「別に悪いことをしていないに、ここで生まれ育つてきただけなのに・・・」

 私は最近は不愉快な尋問されたことはない。交番に警察官はいないしパトカーが通り過ぎるのは何時も見るけど声を掛けてはくれない。
 今年(2018)しまなみ海道で雨宿りしていると、軽のパトカー(一人乗務)が来て「伯方島でも見たから・・・歩いてお遍路大変だな、どこまで行くの・・・」と世間話をして、その時は氏名などは聞かれなかった。10月に不動霊場で吉野川沿いを歩いていた時には、パトカーに不審尋問された、警察官も自転車での日本一周を装っていた犯人が捕まったこともあり、不審尋問するような事を言っていた。2014年に東北の不動霊場を歩いていた時には「巡礼」が珍しいのか、不審者が通ると何人もの人から通報があったらしく、バイクで警察官がやって氏名を聴かれ失効した運転免許をみせ、照会の返事が来るまで待たされた。
 何年か前、徳島城公園の近くで、要人が来るのでテロ警戒していて、台車の荷物の中を見せろと言われ不愉快な思いをした。蛙さんも不愉快な思いをしたんだろうな、蛙鳴くを繰り返し、泣くともとれるし、昔は私もその様な状況の場にいたこともあり、何度も読んでいると深く響く句になってくる、普遍的な句である。

# by tatazumi | 2023-05-06 07:04 | 「句集 風懐に歩三昧 幸月」から | Comments(0)
『句集 風懐に歩三昧 幸月』より
      毎日巡礼ヒロユキが気に入った句④


海鵜一羽羽根を広げし冬日哉 幸月

 2018年10月吉野川の堤防の上にテントはって寝ていた。夜中に句集を広げるとこの句を見つけた、今まで「自画像」の詞書が目に入らず見逃していた句だ。「自画像」と知りこの句に感じ入った。
 群れている様子が浮かぶ鵜であるが、さむざむとした陽ざしの中で羽根を広げ休んでいる、のんびりとも寂しげとも思える光景である。それが幸月さん自身であったのである。

 この句の後に選んであった昆虫の句を読み返すと、本人の意図とは違うかもしれないがどれも自画像行末の暗示に見えてしまう。


羽根一枚失せし蜻蛉に膝を借す 
  
逃げる蛾を掴み蜻蛉は喰みにけり
 
吾が肌に止まりて果つる蛾なりけり


# by tatazumi | 2023-05-06 06:58 | 「句集 風懐に歩三昧 幸月」から | Comments(0)
『句集 風懐に歩三昧 幸月』より
      毎日巡礼ヒロユキが気に入った句⑤


宿毛道の駅
逝く遍路生きる遍路の野宿床  幸月

 宿毛道の駅には海をバックに野外舞台があって、そこに私は台風避難した。舞台の左右の楽屋口に私と他の一人がテントを張って雨風をしのいだ。
 後から別の所で会った遍路と話していたら、その台風の時にその人も宿毛道の駅にいて道の駅の「お好み焼き屋」さんに言われて便所の中で台風の通り過ぎるのを待っていたのだそうだ。
 その店主さんが道の駅に来る野宿遍路の世話をしていたらしい、「野宿お断り」の公園や東屋もあるなか、緊急の場合に対応してくれるのは有難い。

 幸月さんも世話になっていたらしく、出所して新居浜に住んでいた時に、彼に言われ私は「お好み焼き屋」の店主に彼の近況を報告したことがある。

PS 2023年5月6日、最近通った時、全面的に工事に入っていて野外舞台は消滅していた。


# by tatazumi | 2023-05-06 06:05 | 「句集 風懐に歩三昧 幸月」から | Comments(0)