●道路舗装工事
好き好んで来たわけではない
かつてに番頭が割振りしたのだ
やつたことのない仕事だし
朝から気がめいった
全面舗装でないのでフイッシャーは使えない
ダンプが下ろしたアスファルトを
スコップとトンボでならしていく
表に立っているだけで汗だくなのに
アスファルトの熱気のガスを吸いながら
スコップでアスファルトを放り投げる
私は地下足袋なので始めのうちは入らないようにしていたが
力が入らないのでアスファルトの上にのって作業する
地下足袋がアスファルトをかぶる
火傷しそうだ
がまんしながら作業する
指を動かし地下足袋の底を地面でこするが
こびりついた熱いアスファルトはとれない
汗ダクダク水をガブガブ飲む
熱気に当てられて直ぐに力つきて
作業は続けられない
長い一息を入れながら作業する
地下足袋はアスファルトがこびりついて
使い物に成らなくなった
もっとも使い古して張りつけがはがれていて
いつ捨てようかと思っていたので
ちょうど良かった
ズボンに付いた乳剤は落ちそうもない
今日は体力を使いはたした
私の10年20年先輩が平気な顔して
私以上に仕事をしていた
風呂に入ると足の親指のつけねが水ぶくれしていた
(寄場詩人13 安田健二)
●こあくとうと おおあくとう
ももたろうきぶんの おおあくとう
たからじまにいる こあくとうを
あくとうの かざかみにもおけぬと
おやぶんたちに かいじょうまわし
ひとをあつめて おどしをかける
こあくとうは このしまは
もともとおれのしまだと いいはり
おおあくとうは たからもほしいけれど
こあくとうが おおきなかおするのが きにくわなくて
このきかいに つぶしてしまえと おもっている
たからは おやぶんどうしで わけあっても
こぶんには まわってこない
おやぶんは けんをふりかざし
ちからこそ せいぎだと さけんでいる
おやぶんは さけぶだけで
いつもしぬのは こぶんだけ
あくとうに いいもわるいもあるものか
でいりに せいぎもふせいぎもあるもんか
(寄場詩人17)
●起りえない事故が、なぜ起るのか?
学者や役人は語った
考えられない、予想もしない、起りえない事故だと
起りえない事故が起るという、この矛盾を
御用学者や警察は個人の責任に転嫁しょうとする
現場では起りうる事故が無数にある
ハッとしながら労働者はふんばっている
安全第一だけを考えていたら能率が上がらない
現場の労働者は俺だけはだいじょうぶだと危険かくごで仕事している
土木建設業界じゃ重層下請するうちに安全対策はスローガンだけになってしまう
安全第一と言いつつも、金も人も時間も出さないから
結局現場の労働者のふんばりに安全はまかされる
行政も事故さえ起こさなければ業者となあなあで告知してから査察する、
その時だけは安全第一
役人は大学出てたって現場実務は知らないから、業者にたよらなければ何もできない
入札談合はなぜなくならないのか?
重層下請はなぜなくならないのか?
行政はどうして業者に指導力をはっきできないのか?
これを解決しなければ、事故はいつでも起こる
俺が言いたいのは事故は個人の責任で起こったのではないと言うことだ
もうけ第一で安全ををおろそかにする土木建設業者の責任である
それを許している行政の責任である
(寄場詩人19)
●ビラはりしていてパクられた
暗黒の闇の中から人間がとびだした
私はすぐ反対方向にかけだした
はしった はしった ガードをくぐり路地をぬけ・・・
はしった はしった ガードをくぐり路地をぬけ・・・と思ったが
10メートルほど行ったガードの下で私はこけた
おっかけてきた人間が肩をつかんだのだ
その人間は私に馬乗りになり、わめいた
「ゆるさへんで ゆるさへんで」
私はしまったと思った 観念した
小柄なこの人間から逃げられそうな気もしたが
ケガをしたくないので じっとこけたまま 静かにしていた
「なんで逃げたんだ 許さへんで 許さへんで」
あいかわらず一人で騒いでいる
他の人間はやってこない
ここで私は思った
これは逃亡をさそっているんだ逃げたらボカスカなぐられる
「10時20分(午後)現行犯で逮捕する」
「抵抗するな ゆっくり立ち上がれ」
と馬乗りの人間は言った
私は無言のまま その人間に微笑をかえした
(寄場詩人24)
●ひさしぶり
ひさしぶり
こんな広い部屋に一人で
ワンルーム 便所もついてカーペットひいて
ひさしぶり
仕事のことも考えず
ゆったりと 大の字で寝る
ひさしぶり
空調もついているし
そのうえ 一晩中電燈もついて
(寄場詩人24)
●すてきな時間
こんな空間に閉じ込められて
てもちぶさたで
正座して座禅のまねごとをする
目をつむっていると
うつらうつらしてくるので
目をみひらき
壁のしみをみつめる
煩悩がつぎつぎにうかび
α波はでてこない
そのうち足がしびれてきて
あぐらをかく
大きく腹式呼吸をする
壁のむこうに何も見えぬままの48時間
(寄場詩人24)
●一日
今日も日がくれた
なまけものの俺のうえにも
夜はきて
一日はおわる
そうやって
月日はすぎていく
ぼけっと何もしないでいても
朝はきて
一日ははじまる
頭頂がうすくなり
白髪まじっても
女けのない一人ぐらし
何ともない一日
日めくられるだけの一日